学校の最寄り駅の改札。
いつも都と待ち合わせをしている場所。
昨日の一件があったせいか、都との距離がいつもよりも近くに感じた。


「今日も寒いねー」


そう言って都は手に息を吹きかけた。
もう11月後半。
もうすぐ冬休み。

他愛無い世間話をしながらいつものように通学路を行く。
校門を通り、下駄箱に行く。
そして、自分の下駄箱の前に立ち、ローファーを下駄箱にしまい、代わりに上履きを取り出した。
ここまではいつもと一緒。

しかし、ひらりと舞った、白い封筒。


「…なに?」


香菜は床に落ちた白い封筒を手に取る。
それを都が覗き込んだ。
そしてにやりと笑う。


「下駄箱に手紙って言ったら…ラブレターじゃない?」

「まさかー…」


そう言いながら、香菜は封筒を開けて中の手紙を読む。
香菜は都に視線を戻し、困ったような嬉しいような複雑な表情を浮かべた。


「都ちゃん…これ、ラブレターみたい?」

「だから、私に聞くなって」


香菜はもう一度手紙に目を向ける。
そしてもう一度読み直す。
初めてのラブレター。
香菜はかぁぁと顔を赤くした。


「…誰から?」

「A組の佐々木君…」


都が目を見開く。
A組の佐々木隼人と言えば、サッカー部の元主将で大学もサッカー推薦で行くほどの実力の持ち主。
爽やかで優しく、女子に人気がある人。


「罰ゲーム…かな?」

「…かもね」


香菜と都は顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。




密かに楽しみにしていた、4限の数学の時間。
先生と会える唯一の時間。
でも、今日は憂鬱だった。
どこか後ろめたい気持ち。
そして、昼休みに待ってますという一文。

佐々木君とは去年同じクラスだったっけ…
話した記憶ははっきり言ってあまりない。
ただ一度だけ隣の席になったことがある。
いつも笑顔で、いつも誰かが周りにいた印象がある優しい人。


香菜ははぁと溜息をついて、窓の外を見た。



先生の顔が見れない…






「香菜…行くの?」

「うん」

「頑張ってっ!」


励ましてくれる都に香菜は手を振って答えた。
そして、教室に戻ろうと振り返ると先生がいた。


「あ、はっしー」

「あれ?竹内は?」


先生はきょろきょろと辺りを見回す。
しかし、香菜の姿が見えなかった。


「なんで香菜?」

「いや…おまえらいつも一緒にいるだろ。それになんか竹内、元気なかったみたいだから、ちょっと気になった」


都はじーっと先生を見上げる。
その視線に先生はたじろいだ。


「なんだ?」

「別にー」


都はにやりと笑った。
先生はぴくりと眉を動かす。


「香菜は今、2人の男の間で揺れてるんですよ」

「はぁ?」


都はくすくすっと笑った。
そして、先生に背を向けた。


「香菜、モテるよ」

「なんだ?」


教室に入ってしまった都の言葉に首を傾げる。
そして、先生は少し早足で歩いて行った。











---コメント---
第4話です!
今回はちょっと話が動きました。




2009.11.29

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