「ほーら、席着け」
はっしー!?なんで!!?とクラス中から黄色い声が飛び交う。
「杉浦先生は出張です」
その一言で女子たちが小さく喜び合う。私はそれを横目で見て、溜息を吐いた。
そして配られたプリントに目を通す。
日本史は、よく分からない。
やる気が出ず、窓の外を眺める。
「センセー、コレ分かんない」
「私もっ」
一部の女子がプリントを片手に持ち、先生に近づいていく。
先生は軽く溜息を吐いた。
そしていつもの少し困った顔。
「僕も分かんない。数学の教師だから」
それでいいのかと心の中で突っ込む。思わず顔が笑ってしまう。
すると先生と目合ってしまい、タイミング悪っ!とプリントに目を向け、顔を逸らした。
「じゃぁー、数学教えて」
「ダーメ。今は日本史の授業です。席着いて、教科書開けば分かるから」
散った、散ったと手を払うと、渋々女子たちは席へと戻った。
それを見て、恐る恐る先生を見ると、何やら本を開き眺めていた。
やっぱカッコイイ。
そして目線を外へと向けてこの授業が終われば下校かぁとか、グラウンドを走っている生徒たちを見ては6限に体育なんて可哀想などと思い、仕舞いには眠くなってくる。
頬杖を付きぼーっとしていると、上から声がした。
「竹内…お前、プリント真っ白じゃん」
呆れた声に、慌てて上を向く。
冷や汗が浮かぶのがリアルに感じられた。
「あ、あは…」
「笑えば済むってもんじゃないの」
「す、すみません…日本史、苦手で‥」
嘘じゃないけどサボっていた一番の理由じゃない事を当たり障りなく言う。
流石に先生が女子に取巻かれてて嫌だった―‥なんて口が裂けても言えない。
はぁーと溜息を吐かれた。
うっ…微妙に落ち込む。
するといきなり先生が机の横にしゃがんだ。
「まずは教科書開こうか、竹内」
「……」
意味が分からず、ぽかーんと先生を見る。
それに気づいた先生が軽く笑みを浮かべた。
「別に怒ってないから。教科書開く」
「は‥ぃ」
訳が分からないまま、言われた通りに教科書を開いた。
すると先生がプリントと教科書を見比べ、指差した。
「問一、コレ。『富士川の戦い』だろ」
「あ‥」
「ちゃんと教科書見れば分かるから、頑張りなさい。香菜ちゃん」
そしてぽんぽんと頭を叩かれた。
どき‥と胸が高鳴る。
嬉しい不意打ち。だけどちょっとずるい‥
きっと今顔が赤いんだろうなぁとどこか他人事のように感じていた。
ふと現実に戻り教室を見まわすと、一部始終を見ていた女子たちが羨望の眼差しでこっちを見ていることに気が付いた。
そうして私は慌ててプリントと睨めっこを始めるのだった。
この後女子たちが全員、教科書を閉じたのは言うまでもない。
---コメント---
第2話目終了ですv
短いですが、ごめんなさい;;
授業編です!しかし何故はっしー担当の数学じゃなく日本史かと言うと、深い意味はありません。
設定をしたときの私の思考がおかしかったのでしょう(笑
ややこしい設定にしたなぁと自分でも思いました!(待て
2007.3.2
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